5月3日(月祝)、県商連も参加する静岡県憲法会議主催の「憲法集会」が開催されました。
昨年はコロナ禍で中止の判断をしましたが、開催を望む声も多く寄せられていたことから、実行委員会では会場の労政会館ホールへの入場可能人数を150人迄とし、YouTubeでのライブ配信の視聴による参加も合わせて呼びかけました。
事前の申し込みでは100人に満たなかったため、大きなホールがガラガラで少し寂しい気持ちでしたが、開場時間が近づくとともに人が増え、最終的には会場参加が120人と、座席の間隔が空いてはいるものの会場いっぱいの参加者となりました。
コロナ禍で国民の関心が逸れていることを良いことに、自民・公明・維新の各党が衆院憲法審査会で「国民投票法改定案」を強行し、改憲への地ならしを狙う動きへの関心の高さが窺えました。
第1部「篠笛の演奏と憲法朗読」は、劇団「わらび座」で俳優として活躍された永野修司さんによる『清沢弁(静岡市内山間部で永野さんの出身地)』での憲法朗読と、日本の伝統的横笛奏者の松尾慧さんによる篠笛演奏のコラボレーション
そのまま読めば堅苦しく、解釈が容易でない憲法を静岡県民にとって馴染みある言葉で読まれる憲法は、「憲法は国会や議員のためにあるものではなく、都会だろうが田舎だろうが日本に住む国民一人一人を守る身近なもの」と改めて思い起こさせる響きがありました。
また、節目に入ってくる篠笛の清らかな音色は、様々な角度から国民を守ることを保障する憲法の荘厳さを表しているようでした。憲法が本当に守られる社会であれば・・・と希望がわいてくるような素晴らしいコラボレーションでした。
第2部、笹沼弘志・静岡大学教授による講演「日本社会の脆弱性と日本国憲法」は、笹沼教授のホームレスの人々を支援する野宿者のための「静岡パトロール」事務局長としての活動を通したお話でした。
昔のようにホームレスの人を見かけることはほぼ無くなりましたが、2021年1月の調査では全国で3824人以上(テント等の数から推計)、把握ができていない人数を含めるとその倍以上は存在していると思われます。
時々テレビニュースで報じられる野宿者襲撃殺人の事例など居た堪れない話も含め、住民基本台帳に記録がないからとコロナ禍で特別定額給付金も受け取ることができない状況などが紹介されました。
また、貧困の広がりとともに増える性風俗に従事する女性の数ですが、この間の持続化給付金の給付対象からは「性を売り物にしている」ということで外されています。現在、性風俗に従事している女性の数が全国約35万人というお話は衝撃的でした。
笹沼教授は生活に困窮しても申請に躊躇しがちな生活保護について、「もっと使いやすければだれも悪いことと思わない。例えば健康保険を使うことを拒否する人はないはず。プライドが高い低い関係なく必要な時に申請するハードルが低ければもっと活用されるはず」と仰いました。この言葉に会場から多くの頷く声が聴こえました。
実際の貧困やホームレスの現状から語られる言葉は、非常にリアルで納得できることばかり、いつだれが同じ立場になるかわからない、そして憲法が機能していない現状について私たちは知るべきだと感じさせられました。
講演後の質疑では参加者から「働こうと思えば何でもあるのに働かない、それで生活保護を受けて楽をしようとする人はずるいと思う」という率直な意見も出されました。
笹沼教授は、そう思わせてしまうマスコミや政治家の言葉などを紹介しながら、「一人ひとりのホームレスや生活保護受給者がどのような事情を抱えているか、本当に働ける場所があるのか、その人を無条件で受け入れる環境があるのかを見極めることが大事」等と丁寧に答えられました。
我が国の憲法と私たち国民が置かれている脆弱な社会について、深く考えさせられる講演でした。第1部の憲法朗読と合わせ、憲法を考える集いとして非常に有意義な集会でした。
コロナ禍で中小業者の営業とくらしがどんどん追い詰められています。目の前の対応に追われる毎日ですが、私たちも改めて憲法について考え語り合い、憲法が持つ本来の役割について声を発していく必要があります。