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ますますおかしな所得税法第56条…県婦協でオンライン学習会

10月20日、県婦協主催オンライン学習会第2弾として「コロナ禍で考える業者婦人の人権~ますますおかしな所得税法第56条」を開催しました。昼と夜の2回の開催で計69人が参加しました。

開催に先立ち県婦協幹事会では、「12月5日には第17回全国業者婦人決起集会、来年早々には『所得税法第56条廃止を求める請願』署名提出が予定されている中、署名推進と、コロナ禍でも業者婦人の置かれている立場を再認識し運動の目的を離さないようにしよう」とテーマを決めました。

オンライン学習では講師の県連事務局長から、所得税法第56条と57条の規定、1898年(明治29年)に民法が制定されてから「戸主が家の統率者として家族に対し扶養義務を負う」との「家制度」が確立され、1945年の敗戦によりGHQの統治下で日本国憲法が制定された1947年に「家制度」は廃止されたがその間49年。

その49年間で植え付けられた日本人の意識と、1953年からのGHQによる社会主義運動を取り締まる「逆コース」の流れが、今も残る性別や社会的・経済的弱者に対する差別に表れているのではないかという歴史の話と、税法の「特典」のみで白色か青色申告かを分け、家族従業者を一人の労働力と認めない点が、個人事業の働き手の流出や生産性の低下、下請単価が上がらない理由、ひいては最低賃金の問題にも影響を及ぼす相対的な関係であると説明しました。

県婦協では2015~2016年に全県一斉自治体請願・陳情を行っており、各民商婦人部が挑戦した請願での口頭意見陳述では、辛辣で侮辱的な発言を市町議会議員や市町税務課職員などに浴びせられたことから、学習会ではこの経験を基に様々なケースをひとつひとつ検証していきました。

まず「所得分割で税金を安くしたいのだろう」という指摘に対しては、夫婦2人の年間世帯所得350万円を超えれば、確かに所得分割で所得税は白色申告より負担が減りますが、年間世帯所得500万円を超えなければ大きな負担減になるとはいえず、そのそも所得分割が目的だという指摘は的外れでしかない。

「青色申告にすれば早い話でしょう」に対しては、青色申告にしても届け出た範囲しか給与を払うことができない、もし税務調査で青色申告取消ともなれば給与は経費から除外される。金額の範囲が決まっていることと税務調査によりその立場が簡単に変えられるということは「家族専従者をいち労働者として認めている」とは言えない。

そして「家族従業者はそもそも本当に仕事しているの?」という酷い言葉もありました。年間控除額86万円を静岡県の最低賃金額913円から考えると、年間で942時間、1ヵ月で78.5時間、1ヵ月25日働いたら1日わずか3時間の労働になります。意見交流では参加者に「単純に家業だけで考えると、1日何時間くらいを費やしていますか?」と質問し、それぞれの仕事の内容や思いを出し合いました。

「私は現場仕事から集金、記帳業務全てを担っていて朝から夜まで仕事をしている。とても1日3時間では足りない」と語った焼津民商婦人部の鈴木さんは、「苦労して働いても『労働に対する報酬』と認められず、保障もほぼないような中、家族従業者が朝から夜まで働いていることをもっと国に理解してほしい」と感想文を寄せてくれました。

他にも「朝、現場に出る夫のお弁当を作り送り出してから銀行や取引先を回ったり、慣れない帳面を付けている時間、一日8時間とはいかないまでも毎日約半日は絶対に時間を費やしている」といった意見が相次ぎ、白色事業の家族専従者(配偶者)の控除額86万円がいかに低い金額であるか、それも『控除』でしかないことに改めて憤りが広がりました。

その他、国や自治体も積極的に推進しているというSDGsの「5.ジェンダー平等を実現しよう」と「8.働きがいも経済成長も」と56条問題を照らし合わせるなど、多方面から意見を出し合い学習しました。また、県内民商では新型コロナ感染により入院した白色申告事業の家族専従者の「傷病手当」支給の問題で、支給申請を出すも居住する市の国保課が難色を示し未だ実行されていないケースが出ていることから、所得税法第56条による弊害がコロナ禍でより鮮明になっています。

SDGsを推進すると言っておきながら明らかに逆行し、更にはコロナ禍で命や健康にもかかわる益々矛盾したおかしな所得税法第56条。様々な角度から検証する学習会でしたが、何より大切なのは「家族や夫婦の働き方と意思は、家族や夫婦で決めることであり国が法律で縛るものではない」ことを講師から最後に強調しました。

学習会にはここ数年間に入局した民商事務局員にも積極的な参加を呼び掛けたため、若手事務局員も複数参加しました。今年4月に入局した富士宮民商の野際友香さんは「上辺だけ見て白から青にしたらどうかなと思っていたが、税法の歴史や経緯を知り、いかに無知だったか、さらに思っていた以上に事業者を長い間苦しめてきた問題だと理解した。日本はSDGsとかけ離れたところにいると感じた」と感想を寄せてくれました。

学習会の様子は、静商連 YouTubeチャンネルで公開しています。