最低賃金1,500円が意味するもの、様々な立場の労働者どうしコロナ禍での困難を交流

11月14日、静岡県労働組合評議会・パート臨時労組連絡会主催の「はたらくみんなの元気の出る集会」が開催され、県婦人部の川島文江会長が参加しました。

集会参加に先立ち、主催のパ臨連事務局長らから「様々な立場の労働者に加え、コロナで苦境に立つ中小業者の状況も話してもらい交流したい」とお話をいただいていました。

集会では川島会長含め8人がそれぞれの立場から報告。保健所や医療現場の働き方や大学生の現在について、そして浜松のタクシー運転手の方からは、「コロナでタクシー運賃だけでは暮らしが成り立たず、お店から顧客にタクシーで商品を届けるフードデリバリーを始めたが、市からの補助があった時は1件につき2,500円、補助がなくなったら800円になってしまい非常に苦しい」という報告がありました。

川島会長からは、この間の県内民商会員の「持続化給付金」など国の施策への申請状況から中小零細業者の売上の落ち込みなどを説明しました。そして飲食だけでなく人と触れ合う様々な業種と、ウッドショックや原油の高騰により製造や建設業者にも甚大な影響を与えていることを伝えました。

そしてそれ以上に深刻な川島会長自身の親しい業者についても「そもそも2019年の売上で所得として月18万円程だった業者が、コロナ禍で月10~15%の売上減になったが、国や自治体のあらゆる支援策から外れており、子どもを含めた家族の生活すら危うい状況にある。所得階級300万円未満の零細業者の多くが同じ状況に置かれ取り残されている」と報告しました。

こうした報告を踏まえ静岡労働研究所の多田事務局長は、静岡県の最低賃金引き上げによる経済波及効果についてお話されました。

「25歳単身でまともに生活するのには、24万6659円が必要。時給にすると1,419円(月173.8H)~1,644円(月150H=全労連要求)」という2015年の県評試算に基づき、最低賃金1500円の実現を求める根拠が説明されました。また、多田事務局長から「全国一律、最賃1500円実現のためには中小企業支援が欠かせない」とも訴えられました。

集会に参加した川島会長は「休憩時間、会場に参加していた数人から『業者は支援がたくさんあると思っていたけれど、本当に大変な人に届いていないことが良く分かった』、『私たち労働者と立場は一緒なのね』と声をかけられ、業者の現状が伝わり、最賃1500円を求める根拠も良くわかったので参加してよかった。大変なのは業者だけでなく労働者も、働く人すべてが大変ななか思いやり協力して運動していくことが大事だとよくわかった」と感想を語っています。

全商連創立70周年記念集会・式典

11月14日、今年8月3日に創立70周年を迎えた全商連の記念集会・式典が東京都内で開かれ、大石秀之県連会長(全商連常任理事)と県連三役(全商連理事)、そして栗田博司県連共済会理事長の6人が出席しました。全体では全国の役員や来賓の方を含め約300人の出席でした。

集会では全商連岡崎事務局長が「全商連創立70周年記念集会への報告」として、コロナ禍、業者の営業とくらしを守る取り組みと並行し、多くの仲間を迎え創立70周年を迎えようと奮闘した全国民商の運動の報告と、民商・全商連の70年の歴史について改めて語りました。

敗戦と祖国再建、苛烈な徴税とのたたかいの中で結成された全商連70年の運動は、国民の命とくらしを破壊する「戦争する国づくり」を許さないことを大前提に、税金で破壊されない国民のくらしと営業を守ることに徹してきました。

新型コロナの発生と拡大は、業者の営業を脅かしただけでなく、「集まって話し合う」ことで築いてきた民商・全商連運動をも分断しかねないものでしたが、「コロナ禍だからできること」と発想を変え仲間の拡大をした組織が少なくありません。

10月末の総選挙結果は、与党の絶対安定多数となりましたが、「消費税減税」を公約する野党の比例票は与党票を250万も上回りました。

こうした結果と70周年を新たな出発点として、国政転換、中小業者の危機打開に再び踏み出そうと、来賓の方々からも呼びかけられました。

組織拡大顕彰では、「総合力向上顕彰=読者・会員・共済A・婦人・青年の5課題全てで直近の各全国総会時現勢を突破」で、三島民商、沼津民商、浜北民商が見事基準達成をして名前が読み上げられました。

浜北民商は「全国けん引顕彰=商工新聞読者数で地域の対象業者比10%以上を組織しつつ、全商連第54回総会時現勢より読者・会員共に増勢」も突破しています。

各顕彰基準突破の民商には年明けに記念品が届けられます。

休憩をはさみ始まった記念式典では、日本共産党委員長・志位氏をはじめとした多くの来賓の方より祝辞と激励が述べられました。中でも志位氏の「中小業者の自らの意思によって設立・運営されている団体は世界でも例がなく、海外で話すと大変驚かれる」とのお話は印象的でした。

普段活動していると忘れがちなことですが、「私たちは自らの意思で集い、自分たちが納めた会費で運営しているからこそ自由にモノが言える」。

生き生きと商売し地域を照らし、人間らしいくらしを求め国や自治体に要求をぶつけていく、民商・全商連のもつ役割について改めて考えさせられました。

70周年功労者顕彰では、50年在籍会員4,663人(静岡231人)、40年在籍会員6,947人(静岡294人)、全商連役員を歴任された方、60周年以降に物故された全商連役員が名前は読み上げられませんが紹介されました。

集会・式典では「民商・全商連70年のあゆみ(年表)」も配布されました。

民商・県商連の全県広告を出しました

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2021年国民大運動静岡県実行委員会・県交渉・・・コロナ禍の業者の実態を訴え

11月1日、県商連も参加する2021年国民大運動静岡県実行委員会の県交渉(懇談)が行われ、共闘する団体の代表者と共に県内民商・県連からも19人が参加しました。鈴木せつ子県議(日本共産党)も同席しました。

懇談に先立ち県商連は、まん延防止等重点措置〜緊急事態宣言下に錯綜した誤った情報により、飲食店経営者が時短営業や休業の判断基準がわからず非常に混乱したことや、ウッドショック等の問題、テイクアウト事業助成金の創設など7項目の要望を出してありました。

休業協力金は期間中1日でも店を開けると対象から外れてしまうという中、情報は主に静岡県のWEBサイトで配信されました。その情報だけで判断がつかなかった事業者は、人員が足りずなかなか繋がらないコールセンターに何度も電話をかけるも繋がらない状態が続き、ましてやインターネット環境がない高齢の経営者などはさらに蚊帳の外という状態でした。

結局コールセンターに繋がらずWEBサイトの情報だけで休業の判断ができなかった人、コールセンターの誤った説明により店を開けてしまった人、少なくない人が休業協力金を1円も受け取れないままになっています。

「危機管理部」との懇談では、「そこに救済措置はないのか?せめてコールセンターの誤った説明を受けた人に対し、コールセンター記録から補償することができないか?」と訊ねましたが、「大変ご迷惑をかけたことは重々承知しているが補償をすることはできない。今回の事態を重く捉え今後このようなことがないように努める」との回答。「今後また宣言を出す際には十分注意する」と言っても、「今度また」までに今経営が追い詰められている業者の営業が持ち堪えるかどうかまで来ていると訴えるも、代替措置は検討段階にもないとのことでした。

しかし前進面もあります。「まん延防止等重点措置」の段階で民商・県商連から鈴木せつ子県議を通じ「コールセンターの対応改善」を何度も要請したことから、「当初50人だった人員が100人に増員され、誤った認識についても想定される質問に対する正しい回答を徹底した。これからも気づいたことがあればどんどん意見を言ってほしい」と職員からの発言がありました。

緊急事態宣言時、実際にコールセンターは途中からは誤った回答はなくなり、担当者自らが名前を名乗るようになりました。そして県の関連部局からは県商連に新しい情報を逐一連絡くれるようになりました。こうした姿勢を今後もお互い保ちつつ、こちらは常にアンテナを高く危機を想定して運動にしていくことが大切です。

危機管理部にはこのほか、「過去に時短要請協力金を払っている事業者には、その他の協力金申請から支払いまでを簡素化し早急に支給すること」を求めました。これについては「支給した事業者をデータベース化しているので、今後はより早く事業者に届くようされていくし、させていきます」と回答されました。

午後の経済産業部には、飲食業者の誰もが参入しやすい「(仮)テイクアウト事業参入助成金」の創設などを求めました。しかし担当職員からは「県の中小企業デジタル化・業態転換等促進事業補助金の活用を」と繰り返されたため、「デジタル化と言っても、パソコンはおろかスマートフォンすら利用していない個人事業者は少なくない。高齢の事業者にECサイト立ち上げや、テイクアウトアプリの導入などと言っても分からない」と訴えましたが、これからの商売はデジタル化が当たり前とばかりに既存制度の活用ばかり主張されたため、「では、その既存制度の中でスマホもパソコンも利用していない、全く分からないという事業者が相談した際は親身になって相談に乗ってくれるのか」と訊ねたところ、少し躊躇した後に「相談に乗る」と回答しました。

またこの間、人との接触に制限を加えたことは飲食店だけでなく、理美容業、運転代行、タクシーなど数えきれない業種の事業者を追い詰めています。そうしたところへの具体的支援の要請については「県が9月に創設した『中小企業等応援金』をぜひ活用してほしい」との回答でした。

しかしこの応援金は、今年8月か9月と昨年同時期と比較し30~50%の売上減が対象で、中小法人10万円、個人事業者5万円を一度きりの給付です。もともと売上が少ない事業者はたった10%落ちただけでも死活問題で、国の給付金・支援金の対象にもならず取り残されたままとなっています。

そういう点を今後も県に強く訴えていくことと、この応援金は課税対象のため「たとえ少額でも税金が増えてしまうなら…」と申請をためらう事業者もいることから、支援策として適切かどうかについても業者の本音の部分をもっと伝えることが重要だと感じました。

その他、健康福祉部に対しては「国保の傷病手当について県内の市町により、申告の青白の違いで支給決定を出さない問題の早急な是正」を求めています。参加者が具体的な市町の名前を出して訴えると、担当者は「市の国保課にしっかり指導する」と約束しました。

この日、参加した民商関係者は「久しぶり!」「元気だった?」と隙間時間に声を掛け合いながら、自分の民商の会員の状況を出し合ったり、困難の解決策などを話し合ったりしていました。コロナで分断されつつあった仲間どうし、統一する目的を忘れていない姿を垣間見ることができました。

民商は業者の経営とくらしを守るための運動体です。毎年のことですが民商・県商連の要求に対し、今回もすぐに解決した内容はありません。しかしこうした機会を存分に生かし業者の実態を伝え、既存の制度や枠組みを少しでも変化させていくことが業者の経営を守ることに繋がります。

ますますおかしな所得税法第56条…県婦協でオンライン学習会

10月20日、県婦協主催オンライン学習会第2弾として「コロナ禍で考える業者婦人の人権~ますますおかしな所得税法第56条」を開催しました。昼と夜の2回の開催で計69人が参加しました。

開催に先立ち県婦協幹事会では、「12月5日には第17回全国業者婦人決起集会、来年早々には『所得税法第56条廃止を求める請願』署名提出が予定されている中、署名推進と、コロナ禍でも業者婦人の置かれている立場を再認識し運動の目的を離さないようにしよう」とテーマを決めました。

オンライン学習では講師の県連事務局長から、所得税法第56条と57条の規定、1898年(明治29年)に民法が制定されてから「戸主が家の統率者として家族に対し扶養義務を負う」との「家制度」が確立され、1945年の敗戦によりGHQの統治下で日本国憲法が制定された1947年に「家制度」は廃止されたがその間49年。

その49年間で植え付けられた日本人の意識と、1953年からのGHQによる社会主義運動を取り締まる「逆コース」の流れが、今も残る性別や社会的・経済的弱者に対する差別に表れているのではないかという歴史の話と、税法の「特典」のみで白色か青色申告かを分け、家族従業者を一人の労働力と認めない点が、個人事業の働き手の流出や生産性の低下、下請単価が上がらない理由、ひいては最低賃金の問題にも影響を及ぼす相対的な関係であると説明しました。

県婦協では2015~2016年に全県一斉自治体請願・陳情を行っており、各民商婦人部が挑戦した請願での口頭意見陳述では、辛辣で侮辱的な発言を市町議会議員や市町税務課職員などに浴びせられたことから、学習会ではこの経験を基に様々なケースをひとつひとつ検証していきました。

まず「所得分割で税金を安くしたいのだろう」という指摘に対しては、夫婦2人の年間世帯所得350万円を超えれば、確かに所得分割で所得税は白色申告より負担が減りますが、年間世帯所得500万円を超えなければ大きな負担減になるとはいえず、そのそも所得分割が目的だという指摘は的外れでしかない。

「青色申告にすれば早い話でしょう」に対しては、青色申告にしても届け出た範囲しか給与を払うことができない、もし税務調査で青色申告取消ともなれば給与は経費から除外される。金額の範囲が決まっていることと税務調査によりその立場が簡単に変えられるということは「家族専従者をいち労働者として認めている」とは言えない。

そして「家族従業者はそもそも本当に仕事しているの?」という酷い言葉もありました。年間控除額86万円を静岡県の最低賃金額913円から考えると、年間で942時間、1ヵ月で78.5時間、1ヵ月25日働いたら1日わずか3時間の労働になります。意見交流では参加者に「単純に家業だけで考えると、1日何時間くらいを費やしていますか?」と質問し、それぞれの仕事の内容や思いを出し合いました。

「私は現場仕事から集金、記帳業務全てを担っていて朝から夜まで仕事をしている。とても1日3時間では足りない」と語った焼津民商婦人部の鈴木さんは、「苦労して働いても『労働に対する報酬』と認められず、保障もほぼないような中、家族従業者が朝から夜まで働いていることをもっと国に理解してほしい」と感想文を寄せてくれました。

他にも「朝、現場に出る夫のお弁当を作り送り出してから銀行や取引先を回ったり、慣れない帳面を付けている時間、一日8時間とはいかないまでも毎日約半日は絶対に時間を費やしている」といった意見が相次ぎ、白色事業の家族専従者(配偶者)の控除額86万円がいかに低い金額であるか、それも『控除』でしかないことに改めて憤りが広がりました。

その他、国や自治体も積極的に推進しているというSDGsの「5.ジェンダー平等を実現しよう」と「8.働きがいも経済成長も」と56条問題を照らし合わせるなど、多方面から意見を出し合い学習しました。また、県内民商では新型コロナ感染により入院した白色申告事業の家族専従者の「傷病手当」支給の問題で、支給申請を出すも居住する市の国保課が難色を示し未だ実行されていないケースが出ていることから、所得税法第56条による弊害がコロナ禍でより鮮明になっています。

SDGsを推進すると言っておきながら明らかに逆行し、更にはコロナ禍で命や健康にもかかわる益々矛盾したおかしな所得税法第56条。様々な角度から検証する学習会でしたが、何より大切なのは「家族や夫婦の働き方と意思は、家族や夫婦で決めることであり国が法律で縛るものではない」ことを講師から最後に強調しました。

学習会にはここ数年間に入局した民商事務局員にも積極的な参加を呼び掛けたため、若手事務局員も複数参加しました。今年4月に入局した富士宮民商の野際友香さんは「上辺だけ見て白から青にしたらどうかなと思っていたが、税法の歴史や経緯を知り、いかに無知だったか、さらに思っていた以上に事業者を長い間苦しめてきた問題だと理解した。日本はSDGsとかけ離れたところにいると感じた」と感想を寄せてくれました。

学習会の様子は、静商連 YouTubeチャンネルで公開しています。